古物商許可を取得した後は、標識掲示や古物台帳の管理、取引相手の本人確認など、古物営業法で定められた6つの義務を守る必要があります。
本記事では、古物商として営業開始後に必ず対応すべきルールを行政書士がわかりやすく解説します。
許可取得後に必要な対応を理解していないとせっかく取得したのに、『業務停止や許可の取消し』となるリスクがあります。さらに『罰金や罰則』が科される可能性もあるので無視できません。
法律を守って営業活動を行っていただくためには6つのルールをしっかり守って営業活動を行いましょう。
古物商許可取得後に必要な6つのルール
1.標識の掲示義務
古物商の営業所には「古物プレート(古物商標識)」を掲示する義務があります。
古物商は営業所毎に「古物プレート(古物商標識)」を掲示する必要があり、お客様や関係者に対して、正規の古物商であることがわかるように表示する義務があります。
掲示のルール
古物プレートを掲示にはルールがあります
①営業所においてお客様が見やすい場所に掲示
②自宅が営業所の場合も掲示義務あり
③ネット販売のみでも、営業所があれば掲示が必要
見やすい場所に掲示と法律で定められているため室内でも構いません。
また古物商の営業所が店舗以外であっても掲示は必要です。
例えば個人で古物商許可を取得された方はご自宅を営業所とするケースも多くありますが,
ご自宅であっても古物プレートを掲示する必要があります。
古物商プレートの記載事項
古物プレートには記載すべき事項やサイズがきまっておりますので法律に沿った古物プレートを準備しましょう。
基本的には古物商許可証を確認しながらプレートの作成を進めるとスムーズです。
注意点としては、古物商許可の申請書類に記載をした1番多く取り扱う品目に対応したプレート名で作成する必要があります。
例えば1番多く扱う予定の古物品目が『衣類』であれば『衣類商』の古物プレートを制作する必要があり、『自動車』であられば、『自動車商』の古物プレートを制作する必要がありますので、申請書類も必ず保管しておきましょう。
1.公安委員会名
古物商許可証には必ず取得した公安委員会名(都道府県毎)が記載されておりますので古物商許可証に沿って取得した公安委員会名を記載します。
2.許可番号
古物商許可証に記載された12桁の番号を記載します。 許可番号が古物商ごとに管理するライセンス番号となりますので必ず正しくプレートに記載しましょう
3.古物商許可者の名称
法人の場合には法人名を記載し、個人の場合には氏名を記載します。
屋号(ショップ名)のみ記載する事は認められておりませんので注意しましょう。
特に法人の場合には株式会社、合同会社と省略せずに正しく表記する必要があります。
古物プレートの作成
古物プレートは基本事項を守れば自作でも構いません。
ただし、古物プレートはお客様の見やすい場所に掲示するので自作よりは外注することをおススメします。
警察署から進められるプレートは4000円程度ですがインターネットで探せば2,000円から3,000円程度で購入が可能です。
古物プレートを制作する場合には以下の基本情報を抑えましょう
・材質は耐久性が必要なので、金属やプラスチック等とします
・サイズは、縦8cm×横16cmとします。
・色は、紺地(青地)に白色の文字とします。
古物台帳の作成・備え付け義務(取引記録)
古物商として活動するには、「古物商許可を取得」するだけでなく、日々の取引を正しく記録することも大切な義務です。
その際に必要になるのが「古物台帳(こぶつだいちょう)」です。
仕入れた古物や売却した古物について、古物台帳(帳簿)に記録し管理していく必要があります。
古物台帳に記録する内容
古物台帳へ記録する情報は、「いつ」「誰から」「どんな物を」取引したかをあとから確認できるようにするための情報です。
古物商許可制度が「盗品の流通防止」と「被害の早期解決」であることからも、「いつ」「誰から」「どんな物を」取引したかの確認ができる事は必須となります。
実際に、警察の盗品捜査が行われる際には古物事業者が保存している「古物台帳」の記録をもとに盗品捜査を実施していきます。
そのため古物商としては古物台帳の記録が義務となります。
実務的には記帳は取引があったその日中に行いましょう。 メモに残して後からまとめて記入するのは記入ミスにつながりやすいためやめましょう。
さらに、古物台帳は記録してから最低3年間保存しなければなりません。
警察による立ち入り調査の対象になることもありますので必ず保存しておきいつでもプリントアウトできる状態にしておきましょう。
【古物台帳に記録する内容】
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取引日
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商品の種類と特徴(メーカー・型番など)
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数量
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取引相手の氏名・住所・職業・年齢
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本人確認書類の種類と番号(例:運転免許証、マイナンバーカード)
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確認方法(現物提示・写しの提出など)
3.取引相手の本人確認義務(相手の確認)
古物商が中古品などを「買取り」をする場合には、原則として取引相手の本人確認が必要です。
つまり、古物商が仕入れを行う際には「取引相手が誰なのかを確認する義務」、いわゆる本人確認義務が法律で定められています。
例外的に「買い取る(仕入れる)」商品よって、取引金額が少額(1万円未満)の場合には本人確認が免除されるケースもあります。
個人情報に関しては取引相手も開示を嫌がる事が想定されますが、古物商の義務としては盗品の流通防止のためにしっかりと対応をしていきましょう。
本人確認はどんな書類で確認すればよいのか?
本人確認書類は、住所・氏名・生年月日が記載されている公的書類で行います
また、スムーズな本人確認をするには顔写真付きの公的書類で確認を行いましょう
- 運転免許証
- マイナンバーカード(※裏面の番号確認は不要)
- 健康保険証(顔写真がないので他書類との併用が必要)
- パスポート
- 在留カードや外国人登録証明書(外国籍の方)
提示された書類は原本で確認する必要があり、コピーのみでは不可です。
書類の種類、番号、有効期限、確認方法も古物台帳に記載しておきましょう。
4.盗品等の申告義務
古物商許可は「盗品の流通防止」と「被害の早期解決」を目的とした許可制度です。
そのため日々の中古品取引の中で「盗品かもしれない」と思う商品に出会った場合はすぐに警察に知らせる必要があります。
どんなにお得に取引が出来る場合でも、盗品を買い取ってはいけません。
少しでも怪しいと感じたら、仕入れ(買い取り)はストップして、すぐに警察に相談することが法律で決められています。
ご自身を守るため、お客様を守るため、そして社会全体の安全のために、「ちょっとでも変だと思ったら警察へ連絡」を意識して営業活動を行いましょう。
たとえば、以下のような取引相手がきた場合には要注意
- 高級品なのに、安くてもすぐに現金化したがる
- 商品をどこで手に入れたかを説明できない
- 身分証の提示をいやがる
- 未成年に見える方が1人で高価な物を持ってくる
- 同一人物が、何度も似た品を頻繁に売りにくる
- 複数人で来店して古物商の様子をうかがっている
「なんか変だな」と感じたら、警察に相談してみましょう。
5.古物商許可取得後に変更が生じた場合の届出義務
古物商許可は「更新制度」がありません。
だからこそ、古物商許可取得後に状況が変わった都度、期限内に書面で変更の届出手続きをする必要があります。
例えば、引っ越しにより許可者の住所が変わった場合や法人の役員が変わった場合には、変更日から14日以内に警察へ書面で届出をしなければなりません。
法人の場合には役員の交代があれば新規古物商許可の申請と同様に就任役員の欠格要件審査も行われます。
また、古物商の営業所を移転させる場合には移転日の3日前までに手続きをする必要があります。
さらに、最近ではメルカリ等のフリマアプリの規制も強化されているため、利用を開始した場合にも14日以内にURLの追加登録届出をしなければいけない場合もございます。
古物商許可では都道府県ごとのローカルルールが存在するため、最新の情報をしっかりと理解して自ら手続きを行う必要があります。
古物商許可に変更が生じていることを放置していると、「営業停止」や「許可の取消し」などの行政処分や6か月以下の懲役または30万円以下の罰金の対象になることもありますので、十分に注意が必要です。
古物営業許可を取ったあとは、定期的に次のチェックをしていきましょう
- 営業所や申請者の住所は変わっていませんか?
- 管理者や代表者(法人の場合はすべての役員)に引っ越しや変更はありませんか?
- 新しい店舗を始めていませんか?
- フリマアプリやECサイトをOPENしていませんか
- 行商(出張買取)を始めていませんか?
該当している場合にはすでに手続き漏れの可能性があります。
遅延状態の場合には古物商許可専門の行政書士を活用してすぐに正しい状態へ手続きをしていきましょう。
【古物商許可の管理は行政書士を活用】
行政書士は古物商許可の取得に加えて、変更に関する手続きの代行をすることも可能です。
変更する点を事前に相談すれば手続き書類の作成や警察署への対応を代行してくれます。
古物商許可を維持していくには、古物商許可の専門の行政書士へ長期的に相談していくことが1番の成功への近道といえます。
特に手続き漏れが発生する場合にはすぐに専門家へ相談して対策を立てながら対応することをおススメします。
6.古物商許可証の携帯義務(行商取引の場合)
古物商が行商取引(移動販売や出張買取など)営業所以外の場所で古物営業を行う場合は、古物商許可証の携帯が義務です。
警察官からの職務質問や古物市場主などイベント主催者からの提示依頼があった場合には、その場で提示できるように常に携帯しておく義務が法律で定められているのです。
古物商の営業所には古物プレートがあるので古物商許可を取得した事業者であることが明らかですが、営業所以外の場合で古物取引を行う場合に取引の相手からすると古物商許可者であるかどうかの判断がつきません。
そこで、古物商の営業所以外の場所で古物取引を行う場合には身分証明書の代わりとして古物商許可証を携帯する必要があると考えておきましょう。
原則として古物商許可証は「原本」の携帯が求められています。
例えばスマホでの画像提示やコピーでは、不十分とされる場合がありますので注意しましょう。
従業員を雇っている場合には行商従業員商を準備
古物商の従業員が行商(移動販売や出張買取など)を行う場合には、「古物商許可証(原本)」の代わりに行商従業者証を携帯しましょう。
【行商従業員商で証明できる3点】
1.その従業員が正規の古物商の一員であること
2.許可を受けた事業者の管理下で行商していること
3.無許可営業ではないこと
古物商許可証は、基本的に事業者(会社や代表者個人)に対して発行されるものです。
そのため、従業員が行商に出るときは、その「許可者のもとで営業していることを示す」別の証明が必要になります。それが、事業者が発行する「行商従業者証」です。
古物商許可証や行商従業員商をしっかり携帯して法律を守って安全に取引してきましょう。
古物商必見!許可後に守る6つのルール まとめ
古物商許可を取得した後は、営業を始めることができます。
しかし、古物商許可は「更新制度」がないため、自らの管理不足によって 知らない間に違法行為や手続き漏れ を起こすケースも少なくありません。
その結果、営業停止・古物商許可の取り消し・罰金や罰則といった大きなリスクに直結することもあります。
古物商として安心して事業を続けるためには、法律で定められた義務を正しく理解し、日々の取引に反映させることが必要です。
古物商許可取得後に必ず守るべき6つの義務
- 標識の掲示義務
営業所(自宅を含む)には「古物商標識(古物プレート)」を見やすい場所に掲示します。 プレートには必ず(公安委員会名・許可番号・許可者名・メインで扱う品目)を正しく表示します。 - 古物台帳の作成・保存
取引日、対価、商品情報、取引相手の氏名や住所、年齢、職業、確認した本人確認書類を古物台帳に記録し、最低3年間保管することが義務です。 - 取引相手の本人確認義務
中古品の買取りを行う際は、運転免許証やマイナンバーカード等で本人確認を実施して、実施の記録を残します。 - 盗品の申告義務
盗品の疑いがある場合は仕入れを行わず、速やかに警察へ通報することが法律で定められています。 - 変更届出義務
営業所の移転、法人役員の変更、住所変更、フリマアプリの利用開始など古物商許可取得後に変更が生じた場合には期限内に警察へ届出が必要です。 - 古物商許可証の携帯義務(行商時)
出張買取やイベント販売など営業所以外での取引では、古物商許可証(原本)または従業員用の行商従業者証を必ず携帯します。
古物商専門家を継続的に活用
古物商許可は、盗品の流通防止と被害の早期解決を目的とした重要な制度です。
営業を始めた後は、標識掲示・古物台帳の管理・本人確認・盗品申告・変更届出・許可証携帯といった6つの義務を徹底して守りましょう。
もし手続きや管理に不安がある場合は、古物商許可に詳しい 行政書士などの専門家に相談 することで、許可取り消しや罰則のリスクを未然に防ぐことができますので積極的に味方につけましょう。